全身性+頚部ジストニアが治った、その1

 今日はすごい頚部、および全身性のジストニアが、整形外科の手術で一発でなくなり、すやすやと気持ちよさそうに眠っている女性のお話しをします。
 まず、前の稿の「ジストニアは筋の緊張を緩める整形外科手術だけで美しく、治せます」の動画の手術前の部分を参照されてください。

それは驚きでした。
 先ほどまで頚のぐるぐる回りの回旋に苦しみ、あごのかみしめで歯がぼろぼろになり、息が苦しい、死にたいと訴えておられた女性。


 私達は、ねらい定めた痙縮コントロール手術を,頸と背部に、本日9時40分から始めました。

 2時間半の頸の手術、背中の手術のあと、頸の左右の回旋・あごのぎしぎしというかみしめ、体幹のねじり回旋は全くみられず、術後こんこんと脈拍数60台、呼吸数6台で上むいて眠っています。もう手術が終わって6時間、どうやらあのはげしかったジストニアは今の所消えたようです。

 緊張していた左の胸鎖乳突筋の一部と、両側の胸最長筋の一部を切っただけです。

 私達の「選択的痙縮コントロール手術」は、このむずかしい不治の病ジストニアの不随意運動にも著効を示すようです。

 

「頚がぐるぐる回ってる。」

 手術前の、この患者さんの妹さんからのメールは次のような内容でした。
 (1通目)
 今回、姉のジストニアの件で問い合わせをさせていただきました。
 姉がジストニアを発症したのは9年ぐらい前で、2~3年前からかなり悪化し色々な症状が現れています。特に酷いのは首が回り、息が苦しいのです。
 

 (2通目)
 ●●大学病院では、全身性ジストニアと診断されています。薬は色々飲んでいるみたいです。
 

 (3通目)
 ●●大学病院でも聞かれましたが、姉はジストニアを発症する前は、デパス等お薬には一切無縁の生活でした。また、姉のジストニアは遺伝性とは違うようです。大学病院で調べました。

 すごいジストニアがあるのですね。
 動画も送ってこられました。頚が絶えずぐるぐる回っている。
 頚の動きをとめると、体がねじれて動く。
 体がふとんの上で左右にゆれている。
 

 頸が痛い。息が苦しい、何とかしてと訴えられる。
 お腹がかたくねじれている。とも訴えられる。
という事で入院していただきました。

 

 症状は頚のねじれと体全体のシビレです。息苦しさも強く訴えます。歯のかみしめが強く、マウスピースをはめています。

 坐る、立つは出来ますが、すぐに頚が痛くなって横になる方が楽といわれます。ひとときも動きはとまる事なく、体全体が右、左にねじれる動きと頭の回旋は続いています。恐ろしいような連続した、体全体が消耗しそうなねじれの動きです。
 

皆さんは脳や、神経がおかしくなったと考えますか?

でも、体中しびれは全くありません。知覚も正常です。知能も正常で、頚が痛い。息が苦しい。何とかしてほしいとうったえられます。脳がおかしくなったとはとても考えられない。私は、筋肉だけが緊張していると考えました。

 

手術の前の妹さんからの4通目の手紙を見てみます。

(4通目)
 ジストニアを発症したのは約9年前。
 現在、毎日服用している薬は、
 000㎎を6錠
 000025㎎を1錠
 他の薬も処方されていますが、服用していないようです。
 痙攣は、顔面、首。肩等、色々な部位に現れています。
 過去の治療は生体、鍼灸、●●大学病院でのボトックス注射などです。
 最初の内は回復がみられていました。昨日、無事にこちら(00からに00へ) に着きましたが、痛みがずっと続いているようです。特に頚の痛みが一番酷いら しく、寝れない日々が続いているみたいで人相が変わってしまっていました。
 このような状況ですが、宜しくお願い致します。

 追伸
 このメールを書いている時に姉が息ができないと言いだし救急車を呼んでしましましたが、酸素は十分行き届いているとわかり、結局自宅に戻りました。


 相当にひどい痛みと呼吸の抑制された、つらい症状の中にいる事がわかります。

 こうしてこの地域での治療法の提供のないままに過ごし、頚の痛み、回旋、手足・体のねじれ、背中の痛み、呼吸困難に苦しむ中、当院の事を知り、受診されたという経過をたどっています。このまま放置していては、命が危ない。


考えられる事

この頚のねじれと痛みは、頭を支える、頸のまわりの筋のすり切れと、それによる特定の筋の強い緊張によるものではないか、と診断しました。知覚神経が傷ついた所見はない。知能もおかしくなっていない。


(続き)

 入院時、主訴は頚のねじれの動きと痛み、体幹のねじれ、硬結と呼吸困難で、本人は体の絶え間ない動きで消耗し、悲惨な苦しみの中にいました。

 これこそは私達整形外科がとりくむ問題ではないか。
 整形外科的選択的痙縮コントール手術を育ててきた私は、一瞬にしてこれは私達整形外科の手で治せると実感します。主に頚の筋の緊張を除き、体幹の筋の緊張を軽く除き、この死の苦しみを除くだけでいい。

 入院から手術までの4日間の観察で、
①頚の回旋が主体的問題。
②体幹、腹と腰のかたい固縮があり、このために呼吸困難がきている。
③手足にはごく軽い緊張の亢進がある。けれども無理すれば支えられて立ったり坐ったりも出来る。頸の強い動きと合わせて、体の緊張の動きも少し出てとい う事がわかりました。

  体の形は一見ゆがんでいません。しかし頸を固定しますと始めて体の一部がま わったり、まげのばししたり、不随意に動いています。という事は頸の異常な動 きと、体幹の軽い動きの異常が、体全体の動きの異常の原因かも知れないという 事が更に確認出来ます。

④もう一つは原因ですね。
 まず、脳やが原因と考えられません。神経や脳が悪くなるような原因も思いあた らない必ずしも脳起因と考えられにくい発症状況がある。ただ、動きがおかし い。脳神経が悪いか、筋肉そのものの動きが


 そこで、少し発症の時の事を考えてみます。

 9年前の発症ですね。現在50歳とします。40数歳の発症ですね。それまでは全く正常だった。

 若い18~22歳頃から毎日歯科衛生士の作業をされておられる。首を左右にかしげての1日8時間、20数年、毎日働いてきた。頭の重さは10㎏弱。繰り返しの頭を横に倒す作業がある。
 

 ここにジストニアが引き起こされた原因はないか、と考えてみます

 主体は職業性と考えられる。長期にわたる首を前に曲げる姿勢保持のために、頸の後に位置し頚を支える単関節筋(後頚筋)がすり切れた、と考えられます。脳の異常があるとは見えない。脳の病気ではない。であるとすると頸の前に残された多関節性の筋群すなわち胸鎖乳突筋が過活動している事が考えられる。特に左がわの曲がりがつよい。

 

そこで、

頚部の局所的な過剰な緊張だけを除く選択的多関節性ジストニア筋解離手術を計画しました。胸鎖乳突筋の中枢腱だけを完全にゆるめる整形外科の手術です。

 また、腹部、腰背部の過緊張とねじれに対しても、その緊張をゆるめ、回旋の動きをとめ、呼吸困難を除くために最小限の筋肉だけの手術、胸最長筋部分延長術という選択的多関節性ジストニア筋解離術を実施する事にしました。

 

「これでよくなる。自信をもって!」と。自分自身を奮い立たせて手術場に向かいました。

(続き)

 では、どのような手術がおこなわれたのでしょうか?
 まず、
 くびの左側の多関節性屈筋の中枢腱の全部を切離します。
 頚の回旋、ねじりに対しては、まず、頚を左前に曲げる多関節筋(胸鎖乳突筋)の中枢腱と筋を全部切離します。この筋は頚部ジストニアの荒々しい動きの最大の原因と一つと考えられ、荒々しい動きで頭を左前の方に引きずり倒していると捉え、これをゆるめるのです。この筋はくびを曲げ、ねじる、動きの速い、しかも弾力性の強い最大の筋になります。

 頚の屈筋群をゆるめる方法にはいくつもの段階があって、今回はそのうちの一番ねじれの強い腱、左側だけの胸鎖乳突筋の切離延長術です。右前の胸鎖乳突筋の全ての腱と筋とを一緒にゆるめてしまうと、頚をまげる力が弱くなって頚が反って、頚が曲がらなく傾向が出ては困るので、片方だけ一番軽い手術で様子をみる事にしたのですね。用心深い手術をしていきます。頚の左方向への回旋ねじりだけを少なくする手術ですね。

 つぎに体のねじれと息の苦しさ(呼吸困難)に対しては

 背中の反り、ねじりをおこす背筋(胸最長筋を)ごく軽く延長しました。
 これによって体のねじり回旋の動きをとめ、息を楽にして、呼吸困難をなくそうとしたのです。

 整形外科ではこのように体のねじれを除く事による呼吸困難をなくす痙性コントロール手術が開発されています。その効果はすごいものがあります。外肋間筋という胸郭を広げる筋があります。これは肋間筋のをひろげ息の吸い込み筋ですね。この筋を締め付けて、胸郭を広げなくする筋は最長筋ですね。この緊張した多関節筋をゆるめると、単関節筋の外肋間筋が元気に働きだすのです。、肋間筋の動きを楽にする手術選択的ジストニア多関節筋コントロール手術になります。この胸最長筋延長術は息がしやすくなるのを期待して、両側におこなわれました。

 このように手術は慎重に慎重を重ね、決して機能が悪くならない配慮のもとおこなわれます。

 こうして第一回目の手術が終わりました。

 

6時間後:

ジストニアの動きは、寝ている限り完ぺきに消えてなくなっています。
 そしていわく、目をあけて話している時に”。
「お腹(なか)すいた」と!!

お腹の空いたことを感じるようになりました。

 

続き

術後1日目


 さあ、一日開けた次の日、はたしてよくなっているのでしょうか?

頚の筋は一本しか切ってないのだけど?
 顔を上に向けて寝ている状態では、頚の左右への回旋、ねじり、および体幹のねじれ、はすっかりなくなっていました。ベッドの上で坐っても頭のゆれはなく安定して、回旋ゆれもありません。
 これが永遠に続くとなれば奇跡ですが、、。ある意味で予定通りでもあるのですが、、。

 合併症がないか。
 副作用はないか。
 すぐ1~2ヶ月で再発はないか。
 残った動きはないか。
といった目で見る必要があります。

①残った動きがありました。
 あごにまだ硬さが残っていました。
 くびの緊張は取れてますが、口の緊張が残っています。側頭筋の緊張が残っているのですね 。これは口腔外科の先生にお願いしなくてはなりません。口腔外科の先生にお願いすれば、やわらかく治せると思います。選択的口腔ジストニア緊張筋コントロール手術をお願いすればいいのですね。

②大量に飲んでいた薬は、まだほしがっています。とりあえず、00錠を半分に減らしました。ジストニア抗精神薬は少しずつ減していきます。

③呼吸は楽になった筈ですが、少し苦しがり、酸素吸入を0.5リットルしています。

④股関節と膝が緊張で左右に動いています。

 マイナスはこの程度のようです。
 でも、まずは予定通り、計画通り最大の苦しみ頚と体の回旋とねじりはほとんどとり去れたようです。

 40年ほどかけて育てたジストニアの固縮をなおす選択的痙縮・固縮コントロール手術は、全身性のはげしい頚のジストニアのねじりの動きにも充分の効果がある事が示されています。脳の神経を傷つけずにすんだ。やはり、ジストニアは筋肉の強い緊張が原因だった。という、安心感と喜びが生まれます。一方で、再発が極端に起こらなければいいが、と心配になります。

副作用はありません。何ら合併症も幸いにでていません。
(続き)

 頚部ジストニア手術後2日目になります。

 頚の回旋は全く見られず、ベッドの上に寝て肩とうでを使って体全体を右・左に回旋させていたくり返しの動きもなくなっています。
 昨日まで見せていた膝の交互のねじれ、まげのばしの連続した動きは、40°位から20°位と軽くなっています。

 合併症、副作用も出ていません。



 しかし、口の中の咬合の動きの中にジストニアの動きがある、といわれます。一応、口の咬合の筋のジストニアの動きの異常も口腔外科の先生にお願いできる余地がありますが、今回は整形外科の頚部のジストニアの治療が主体です。ジストニアの口の咬合は次のテーマにしましょう。

 一応荒々しい頚の回旋の動き(頚部ジストニア)は、横になっている間は起こっていない。坐っている時もみられない。捻転ジストニアは消えたという状態まできています。

 しばらく体の休養をとって、残った19本の荒々しく動く頚部ジストニアの動きを抜きとっていく事になります。

 本人の精神状態も死の淵からぬけ出てきた安堵感もあり、何ら正常の人とかわりなく、おだやかな表情になっています。

 ジストニアは脳、神経系統の病気でなく、単なる頚や、お腹の筋の緊張に過ぎないのではないか、という気持ちが強くしてます。

 さあ、ジストニアの皆さん、あなた方は、もう頚部ジストニアが治らないと苦しむ事はなさそうです。整形外科の先生方にも御相談されるといいですね。暴れまわる筋肉をゆるめ、やさしい筋肉に変えて正常化する治療が生まれてます。


 手術して5日たちました。

 頚ジストニアの回旋、ねじれは寝ている時(横になっている時)はほとんどなくなりました。

 トイレに行く時の頚もまっすぐに安定してゆれる事なく、頚の安定性が保たれている事がわかります。

 第1回目の頚の手術で、あの荒々しい頚ジストニアの動きがはっきりと改善した事がよくわかります。
 また背中の手術で体の前後の固い緊張がやわらかくなり、体の中のねじれもかなり消えています。

 ジストニアという病気の一部として頚のジストニアのねじれと回旋、および体のたえまないねじれ、回旋を示しておりました。すごいねじれでした。

 しかも、このねじれと回旋の動きは、ひと時のの休みも許してくれなかった。この24時間続く回旋とねじれの動きがなくなった、というのは何よりの改善のような気がします。嬉しい

 もう一つの大きな改善点はあの苦しかった呼吸困難がすっかりなくなったという事です。重いジストニアの方は息も苦しいのですね。これも治っています。背中の二本の緊張した多関節筋をゆるめたのがきいています。ジストニアのなかの多関節筋の緊張は本当に悪いですね。

(続き)

 まだまだ20本の荒々しく頭や体を地面に引き倒そうとしている多関節筋群のうち、頚で1本、背中で2本だけゆるめたに過ぎません。

 まだ頚のまわりには緊張した筋がぴくぴくと動いています。残された緊張をおさえるために、緊張をおさえる向精神薬を離す事が出来ないのですね。今から一歩一歩、頚の垂直位の安定性を確保しながらの、残りのジストニアの動きをとりのぞく手術が必要のようです。

 頚部ジストニアはこれまで脳・神経系の病気で、内科的治療、脳神経外科学的治療が主に語られ、治療、研究がすすめられてきました。
 しかし、実態をよく運動学的視野を含めまして考えますと、頚部ジストニアは重い頭を支える頚の筋の働きの異常でもあり、頚の小さい脊椎骨の上にちょこんとのせられた重い頭をどう地面に落ちないように支えるか、という大きな力学的な課題をかかえておるのでしょうね。脳、神経学的な治療だけではこの課題の解決はむずかしい。変に脳で頚に行く脳の中枢部の神経細胞を焼却したり、力を緩めると、頭は頚椎から転げ落ちるかもしれない。頭の安定を運動医学からもどのようにはかるのか、の解決も必要なのでしょうね。

 これら頚の中の筋の働きの異常を解決するため整体とか、はりとか、東洋医学を中心としたとりくみも活発でした。しかし体の外からは筋の動きをコントロールすることは完全には出来にくいという一面もあります。

 もう一つの運動医学を担当する整形外科もなかなか積極的に治療に参加出来る手がかりをつかむ事が出来ず、ジストニアの治療に参加出来ず、特に頚部ジストニア(痙性斜頸)は本当にこれを治してしまうという手がかりがつかみにくい、という一面がありました。

 しかし、この運動学的課題を解決する出来るのが整形外科による運動学的治療である、という確信を持てる時がきています。


今日は術後6日目になります。


 頚のねじれの動き(頚部ジストニア)はとまっています。
 息の苦しさもなくなっています。
 でも●●●という向精神薬が3~4時間たってきかなくなると、おなかのあたりの筋肉がじわじわとかたく気持ちが悪くなるといいます。ま向精神薬の作用で残された筋肉の荒々しい動きの部分を抑えている所もあるのでしょう。

 まずはしかし、6日前の頚の屈筋群の延長手術であの荒々しい頚部ジストニアがとまったのです。たった1本の筋腱の延長であの荒々しかった頚のねじれがとれる!頚部ジストニアが改善する!!
 整形外科の手術がやさしく、さらにとても効果的である真髄が示されています。

 また2本の胸最長筋という背中の筋の延長術であのかたかった体のねじれの動きがとまり、呼吸が楽になっています。2本胸最長筋をゆるめますと、このかたい胸最長筋によって動きを制限されていた外肋骨筋がはたらき出すからでしょうか。
 一気にジストニアの患者さん、呼吸が楽になるのです。

 夢みたいにやさしくかつ生きるための効果の大きい手術を私達は整形外科のジストニア治療のための手術としてもつ事が出来るようになっています。

 これらの結果をもとにこれから第二回目の手術に入っていくことにします。

 これからは頚がまだ左側にねじれていますので、これを治すために、左側の頭最長筋を延長します。これまでに左側の多関節筋屈筋である胸鎖乳突筋をゆるめました。今回は左側伸筋の最長筋をゆるめて、屈曲、伸展の筋の力のバランスをよくするのです。さらに前回、背中の多関節伸筋の胸最長筋を両側二本ゆるめてますので、それの拮抗筋の体幹の多関節性屈筋の腹直筋を両側軽くゆるめます。

 これで頚の左への倒れがさらに少なくなります。また、おなの多関節筋が腹側と背側でそれぞれ二本ずつゆるめられ、胸郭と骨盤をしめつける働きが少なくなり、外肋間筋の胸を拡大させる吸い込みの力が強くなることが期待されます。


(続き)ジストニア手術2回目
 
 今日はジストニアの2回目の手術です。
 最初の手術から数えて8日目の手術になります。

 でも、なぜ、こんなに早く次の手術を計画したのでしょうか?

 一つの事情がありました。

 実はまだいろいろな筋が緊張してつらいとご本人がいわれるのです。このようにまだジストニア緊張が色々な頚の筋肉のなかにたくさんあるのがご本人はわかるのですね。まだ緊張した筋がいっぱいあるのです。それを、一刻も早く切ってほしいと言われるわけですね。早く残っている緊張を除いてほしい、といわれるのです。

 まだ、頚は少し動いてます。ジストニアで切離を予定する筋はまだ残っています。口のジストニアの噛みしめ筋も残っています。一回目はまだ左の頚の伸筋の頭最長筋は緩めていません。まだ屈筋の胸鎖乳突筋だけしかゆるめてない。ですからこの伸側の筋の緊張を緩めなくてはなりません。

 要するに、選択的ジストニアコントロール手術では屈側の胸鎖乳突筋と伸側の頭最長筋の両側を同時にゆるめる事によって、屈伸のバランスをとるのですね。一回目で屈側の胸鎖乳突筋がゆるめられた、という事で、2回目の手術では伸筋の頭最長筋をゆるめる必要があるのです。これで頚の左側での屈伸のバランスがとれてきて、頸全体のバランスがとれる事になると考えられます。一歩、一歩丁寧に多関節筋をゆるめながら、やわらかい単関節筋の活性化をはかるのですね。

 お腹の緊張筋も同じ考えです。伸筋の胸最長筋を前回緩めたので、今回は屈筋の腹直筋をゆるめて、お腹の固い緊張と背中の固い緊張を両側で除いて、胸郭の肋間筋の働きを高めるのです。といった事情で早速、次の二回目の手術に踏み切ったのです。モグラ叩きのような再発はおこさせない、ということです。しかも、一つ一つの手術が間違いないことを確認しながら行うという事で、一つ、ひとつの筋の機能をたしかめながらのとりくみです。

 という事で、左の頚の伸展多関節筋である左頭最長筋を切離しました。同時にお腹の屈筋である両側の腹直筋を少しだけ腱画のところの腱部を部分的に切離しました。

 手術終了から3時間経ちました。
 「前回の手術のあとに比べて、さらに全体としてよくなった。」と本人が語ってくれます。
 また、お母さんも「これまでに比べて顔色が数段よくなりました。これまでは何かしらくすんだ感じがしてたのですけど。」と大変喜んでおられます。

 頭と頚を左側後方向にねじり倒す筋肉を一本延長して、この固い荒々しいあばれ回る筋をさらにやわらかく、やさしい筋肉に変えてしまいます。
 また体を前に後に引き倒しながら、右に左にねじり回す体幹(なか)の筋(腹直筋)を2本延長し、やわらかくゆるやかに動く筋に変えてしまいました。

 荒々しく弾力性に強く働く筋が、やわらかくゆったりと動く筋に変わると、頭や頚や胴体はねじれがなく、ふっくらと動くようになります。

 


 整形外科的なジストニア筋を選択的にやわらかい筋に変えていく選択的ジストニア筋コントロール手術の実態はご理解いただけましたでしょうか? 胸鎖乳突筋など多関節筋は硬い筋は切離しますとしばらくするとまた、切離断端は再び、ふっくらとくっついてきます。しかも筋全体はやわらかくなり、やわらかい力で再び筋として働き始めるのですね。勿論再発の原因にもなりますが、万一再発が起こった時には、再発部の上下のを再度切り離しますと、更にやわらかい筋になります。

 多関節筋はこのように切り離して、やわらかく力の弱いやさしい筋に変えるのもよし、もう一度更にゆるめて、力の更に少ない筋に変えるのもよし、いずれにしても、少しおとなしくしててほしい筋なのです。

続き


 今回の2回目の手術の後の経過は。

「手術内容」
①左頸の後側の筋(荒々しく頭を体の方に引き倒す多関節筋=頭最長筋)をゆるめ る。これで左後ろに倒れ気味だった頚はまっすぐになれると考えます。

②両側のお腹の荒々しく体をねじる筋をゆるめる

 3本のかたく荒々しく体を体の中で地面に引き倒そうとする長い筋をゆるめ、やわらかいおだやかな筋に変えます。脳性麻痺や、ジストニアでは多関節筋は体の中から、頚や手足、体幹を地面に引きずり倒す悪魔の筋なのですね。

 体を支える役割をする短いやさしい単関節筋は大事にそのまま残し、リハビリで機能を強化します。一本の線維も切ってはならないのです。

続く

 

2回目の手術 「3日目の結果」

①頚のねじり、回旋はまったくなく、ジストニアの再発傾向はありません。

②顔つきも弱々しくなく、本人は手術に負けていません。

③手術について感謝の言葉が「ありがとう」との表現で何回も何回もあります。

④「あごの動きはどうですか。」と聞くと、「やわらかくなりました。もうかたくなく、はぎしり もしない。」と、やわらかく語られる。頚の手術であごが楽になる。この時だけでしたが、、。

⑤大きな改善点は、寝ていても股関節と膝関節が曲がり、左右に右・左と倒れながら、捻転して動 いていた両脚(あし)が、かなり静かになり、20°位の曲げのばしで動いています。

⑥あの恐怖の捻転ジストニアの頚、体、手のねじれ回旋が完ぺきにとれています。食欲もあり、寝 ている限り、動きと形の上では何の形の異常もなく、前向きに生きていけそうです。  

⑦呼吸困難も全くなくなり、快適そうです。私達の固縮コントロール手術の目玉です。呼吸困難を 体幹筋をゆるめて治すのですね。

 2回の手術で、頚で2本、背中で2本、お腹で2本、計6本、荒々しい動きをする悪い太い筋を2回に分けてゆるめ、曲げのばしのバランスを考えながら、やわらかく動きのおだやかな筋に変えてしまいました。

 荒々しく、ばねがあるかのような動き、緊張していた筋がいなくなり、頚と体の捻転ジストニアが消えたのです。頚と胴体の間でで、もう再発をおこす筋が6本なくなっているのです。体を支える、単関節筋群が生き生きと活動を始めています。

 脳性麻痺では多関節筋が緊張が強く、曲げるサイドも、伸ばすサイドも、弾力性が強いように見えますが、ジストニアでも同じのようですね。この弾力性の強く、緊張も強く、荒々しく動く筋を選択的に切り離すと柔らかい動きの筋に変り、やわらかい動きに変るのですね。

ジストニアの弾力性のある、緊張した筋がどうやら見つかったようですね。全身に広く存在している多関節筋の様です。これを屈伸のバランスを考えながらゆるめていけば、局所、局所のジストニアの動きは少なくなっていく、という図式が見えてきました。

続き


 2回目の手術のあと4日目です。

 ○○さん  「背もたれを後に30°ほど倒した車椅子を押してもらって近くの公園まで外出をしたい。」との申し出がありました。
 玄関まで見に行くと、全身はゆったりと車椅子に身をまかせて、お母さんに押してもらって満足そうです。

 全身からジストニアの動きが消えています。食欲も少しずつ出ているようです。息の苦しさもすっかり消えたようです。
 少しずつ頭をまっすぐに保つ力もふえてきたようです。

 両足で体を支える力も決して弱くなっておりません。
 頸のねじれは完ぺきに根治的に治った上で、頭を支える力が残っている!!
 

 


 何故荒いねじれがとれる一方で頭を支える力が弱くならずに安定しているか、大変面白いテーマですね。
 それは私達の運動学専門の知見で、頭をまっすぐに支える大事な筋を手術の時に温存して残しているからなのです。

 人の筋群のなかには、弾力性が強く、筋そのものが丈夫で、少々の激しいトレーニングではすり切れない、しかも荒々しく働く長い筋群(胸鎖乳突筋、頭最長筋など)と、

 これとは正反対で、弾力性は弱く、筋そのものは弱くやわらかで、激しい反復性の動きで擦り切れやすい柔らかに働く短い筋群(胸骨舌骨筋、後頭下筋など)と、大きく二つの筋群に分けられ、この二つの筋群が、順々に規則正しく並んでいます。

 このうち、長い筋では痙性がつよくなりやすく、脳性麻痺や、ジストニアでは、局所、局所で固く荒々しく動くようなのですね。ですからこの緊張の強い筋だけを選択的に切ってやれば、痙性だけが、あるいはジストニアを起こす起こす筋だけが弱くなり、緊張や、ジストニアの動きだけが少なくなるのですね。

 反対に、筋そのものは弱くやわらかで、激しい反復性の動きで擦り切れやすい柔らかに働く短い筋群は、体を抗重力的に持ち上げる筋で、これを選択的に残すと、ジストニアや痙性だけを選択的にとり除くことになります。後頭下筋、舌骨胸骨筋などですね。

 頭をしっかり支える、貴重な筋があるのですね。抗重力筋となずけられる筋です。これを100%温存して頚が前後左右に倒れるのを絶対に防ぐのですね。これを温存できれば頚のねじれ、倒れは完璧に防止できるのです。この発想は痙性緊張や、ジストニアだけを緩める事を可能にしてくれています。

全身性捻転ジストニアを治す。


 今回皆さんとともに経過を見ている○○さんへの手術は、私どもの選択的痙縮・固縮コントロール手術という運動医学(整形外科)の中の特に動きの異常を科学的に治そうという手術になります。

 私達日本の整形外科のグループが40年をかけて育て上げた選択的痙縮・固縮コントロール手術という手術の応用ですね。

 どのような手術かという点、これからものべていきますし、このホームページでもくわしくのべていますが、簡単にいうと人の筋肉のうちに長くて、かたくて、荒々しく速いスピードで動き、人の体を、そして頭を地面の方向に引き倒そうとする筋があるのです。とっても行動的だけど、調和性のない筋ですね。

 一方、長さがみじかくて、やわらかく、ゆっくり動き、人の体をやさしくほぐす垂直方向に支える筋もある事がわかってきました。
 ジストニアでは、この長い筋と短い筋のバランスがくずれて、長い筋の働きが優勢であると考え、長い筋だけをゆるめて、やわらかい力の弱い筋にかえてしまうのです。

 私達整形外科医は人の筋骨格系を治療し、その結果をみていくうちに、この機能の差に気づき、これを手術に応用し、固縮コントロール手術として体系化したのですね。
 この選択的固縮コントロール手術を○○さんに使ったのです。

 ○○さんのジストニアはジストニアの中でも一番治りにくそうに見える全身性捻転ジストニアです。色々な治療法になかなか効果があったとの報告はありません。

 ジストニアの荒々しさは、頭から足まで右・左へのねじりの動きを絶え間なく、目が覚めているあいだ中くり返しています。エネルギーが消耗してしまうんだろうな、頚や体が痛いだろうな、とその異常さに圧倒されてしまいます。動画は近日中にYouTubeに掲載予定です。

(続き)
れが永遠に続くとなれば奇跡ですが、今から皆さんと一緒に見ていきましょう。

 

ところで、この○○さんのジストニアは捻転ジストニアといっていいのでしょうか

 さて、ところで○○さんのジストニアはとても興味のある動きをしているのですね。
寝ている姿勢の時の動きですが、どうも上向きに寝ていますと頭が右左右左と左右にねじれます。頭をとめるようにすすめますと、体全体が左右に頚を中心にねじれ、左右に回旋します。

 頭を横向きにすると、体が前と後に交互にねじれてうつぶせ気味からあおむけ気味に、あおむけ気味からうつぶせ気味にばたんばたんとねじれ、回旋します。

 動きは決してとまる事はない、1秒に2回ほど動く速さで動いています。壮絶な動きです。
このジストニアの種類は何というのでしょうか。ある大学では全身性ジストニアと名づけられたとの事。

 彼女の動きを見ていて、やはり体全体のねじれの動きが強いので、頚ジストニアをともなう全身性捻転ジストニアととらえるのが最善と考えました。これでいいのでしょうか。

 さてなかなかむずかしいジストニアですね。

これはむずかしい。
 

 脳神経内科的には?

 脳・神経外科学的には…。
 ボトックスなど筋弛緩薬では…。
 整体や鍼など東洋医学では…。

1.すっきりとこの動きを消し去れるか?
2.消し去ったあと、もとの頚をまっすぐしての座り、立ち、歩き、作業などの動きが出来るか?
3.ジストニアの動きを見違える程すっきりと弱める方法は?

 一方で同じ運動医学でその中核とも考えられる整形外科は、動きそのものを治す事のむずかしさゆえに最初からジストニアの動きを治療の対象としてきておりません。最初から治療をあきらめている。

 一般の方々も、この動きの異常を治す事を整形外科には求めなかったのでしょうね。という事ではジストニアの治療が整形外科では、科学的にはなされてこられなかったのです。

 ところが面白いところから、運動医学的に、、整形外科の中から、この動きの異常の治療をなおそうとするとり組みが芽ばえてきていたのです。

続く

「捻転ジストニア、頚部ジストニア、手指のジストニアは治る疾患になっていた。」

 ところが私達、運動医学を専攻する整形外科から見る時、捻転ジストニア、頚部ジストニアの荒々しいねじれ異常の動きをを治す事はそうむずかしい事ではなくなっていたのです。

 脳性麻痺というもう一つの運動異常の疾患があります。生下時の脳の障害で起こってくる病気になりますが、その中にアテトーゼ不随意運動と名づけられる二次性のジストニア疾患があります。首、肩、肘、手、おや指、手ゆび、胸、背中、お腹、腰、股、膝、足、足ゆびと、全身のあらゆる関節にアテトーゼ(二次性ジストニア)が起こってきて、人の動きを妨げていました。これも生まれてからすぐに起こってくる病気で、治す事の難しいつらい病気ですね。

 体全体に捻転ジストニア的な異常な動きがありえたのです。
 これをきれいに治すために私達整形外科医はこの疾患と死闘をくり返してきたのです。40数年間も。そしてその中で全身の体の中の筋肉の動き方、その作用を骨格との関係で調べつくし、選択的痙縮、固縮コントロール手術を生み出し、このアテトーゼを体のすみずみまで抜き去る事が出来るようになっていたのです。

 手指の先のアテトーゼ、体幹、腰のアテトーゼと、そして頚のアテトーゼもきれいにやわらかくゆるめ、脳性麻痺の二次性ジストニアの問題はからだのあらゆる部位で、完全に解決済みになっていました。
 多い人は10数回の固縮コントロール手術を実施し、頚や体のねじりをとり、手、足の動きをやわらかくふっくらと使いやすくし、あらゆる関節の痛みをとり去り、体幹の呼吸抑制筋を切り離し、呼吸を楽にする素敵な手術となりました。

 脳性麻痺のアテトーゼは脳細胞の異常から来る二次性のジストニアで、それは治しにくい動きなんです。脳の中の構造を変えないとこれを少なくするのはむずかしい、といわれていました。
 それでも今、脳性麻痺の二次性ジストニアでも整形外科では美しく、力強く治せる疾患となり、解決可能な疾患となっています。
 筋肉のかたさをゆるめて治せる病気になっていました。あらゆる部位の脳性麻痺や、アテトーゼの麻痺はすべてやわらかく、ふっくらと美しく力強く正常化に向けて治るようになってきていたのです。
 
(続き)


2回目の手術。術後6日目の観察。

 ○○さん、1回目に頚を曲げる筋のうちの一本を延長し、2回目には左の頚を伸ばす筋を1本をゆるめ、計、頚の筋は左側だけ2本ゆるめ、やわらかい筋が主体に働くバランスに変えてしまいました。

 結果はおどろく程にジストニアの頚の回旋ねじれが治っています。また厳密に観察しますと、手術前の体幹のねじれジストニアの10分の1位が残っています。
 しかし、手術前のねじれとはほど遠い、わずかな回旋だけとなってしまい、もとにもどる気配はありません。

 あの目をおおいたくなるようなジストニアの動きはどこにいったのでしょうか。

 お母さんいわく、
「ごはんは朝ひるばん、全部食べられるようになりました。トイレにも歩いて行けます。廊下を20~30メートル歩いています。」

 面白いですね。本人がベッドからおき上がって坐ると、頚のねじれ、回旋は全くとまってしまっています。
 まだ体のねじれの動きは少し残っていますので、今から残ったねじれを治す手術をつけ加えていきます。残っているのは延長し残した分のようです。これをゆるめにいくのです。

 ジストニアに苦しむ方々、頚部ジストニア・捻転ジストニアは、整形外科の選択的固縮コントロール手術で治る病気になりそうです。

 ○○さんはジストニアのねじれ回旋が完全にとまるまで治療をつづけます。

 ジストニアに苦しむ皆さん、もう一つ大事な事を忘れていました。
 ○○さん、実をいいますと手術のあとも頚のゆれ、倒れは全く来る事なく、しっかりまっすぐに保たれています。この点が奇跡に見える点ですが、これも科学的な裏付けをもとに頭を支える筋群を大事に切らないよう徹底して温存しているからなのです。科学の力を信じて○○さんは前進をつづけます。

(続き)

頚部ジストニアが少しずつ減ってきている。

(2回目の手術後12日目)


今日はまたうれしい一日でした。
 ○○さんの頚のゆれがさらに少なくなり、あごのかみしめがとても少なくなった、と語られます。

 後頭部の痛みがとれてきた、と、自分で寝た状態から起き上がり、自分の症状の事を語られます。
 胸をしめつけるけいれんもない状態になってきました。

 少し残っている症状としては、左頚の筋緊張と両足のあしゆびの曲がりだけになりました。

呼吸困難もなく、
息の苦しさもなく、
食欲も充分です。
このようによくなるとは思いませんでした。

 明日は、この色々な改善を確実なものとし、再発を防ぐための残された頚の屈筋を更にゆるめる事にします。
 これが終わりますと、その状況を2週間観察し、問題があれば反対側の頚の屈筋を延長してゆるめます。同時に、足の中の筋を緩め、ジストニア緊張を除く予定です。

 頚部捻転ジストニアがすっかり治る日々が近づいているのでしょうか
 今しばらく慎重に手術をすすめていきます。