脳性麻痺の治療に携わる整形外科医へ

 

 脳性麻痺という難しい運動障害疾患に携わる気鋭の整形外科の先生方に、1965年代からこの仕事に参加した仲間のひとりとして私が感じた脳性麻痺の整形外科について一つの経験を語る事をお許しください。

 50余年という期間、この治るとは思われない難しい疾患の治療に、そして科学に取り組んできたという、その長さに免じて、運動医学者の感想として聞いて頂ければ幸いです。

 まず始めに、私の脳性麻痺治療の能力についてお話しする事から始めさせていただきます。

動画例2をご覧ください 

 動画2の例は歩けない4才の男の子、両側の股関節、膝関節の治療が終わるとすぐにスタスタと歩き始め、2~3か月後に走る事も可能になりました。右股は内ねじれもとれています。右股内ねじれが少し残り、さらに治療が求められていますが、今では、このように歩けない子どもたちも 次々に選択的痙性コントロール手術で歩けるようになりました。

動画例3をご覧ください

 動画3の例は私が約14年前に治療した少年です。今よりも治療法は不充分だったのですが、歩行器移動から杖なし歩行で普通校に通えるようになりました。両股、両膝、両足の手術を終わり、両肩の手術の後、スタスタと歩き始めました。両肘の橈骨小頭脱臼に対し観血整復術、尺骨骨切り術、円回内筋腱延長術を行い更に体全体が安定しています。

 選択的痙性コントロール手術は体のどこにでも使う事が可能で、しかも広く行えば行うほど体全体の安定性、軽やかさが増してくるのです。

 ところで先生方、脳性麻痺は美しくやわらかく、力強く、隋意性高く、人間の姿らしく治っていますか?

 そう、科学的に治すと脳性麻痺という運動障害、姿勢異常は麻痺のない人に限りなく近くスタイルよく、力強く、ふっくらと治せるのです。人の中のかたい緊張を抜き去るとからだに余裕が生まれ、より人間性をゆたかに高める事ができるようなのです。脳性麻痺治療の考え方を本人の尊厳を高めるという風に変えていけると思います。

 脳性麻痺のスタイルと動きを人間の姿らしく、人の動きに限りなく近いやわらかい動きに変る事で、体として窮屈でなくなり、心の余裕が出来るのでしょうか、人としての尊厳をより豊かに保つ事ができます。体のあらゆる部分でスタイルと動きの正常化が可能になりました。

 今、脳性麻痺の治療の中で、整形外科はあらゆる痙性を選択的にとり去り、麻痺の体を正常に限りなく近づけるという科学、医学を生み出す先端にいます。

 一方で、整形外科の中にも昔からの古い整形外科が色濃く残っています。

 内転筋腱切り術、アキレス腱腱切り術、かえって股関節や足の支える大事な機能をなくしてしまう昔からの腱切りしか出来ない整形外科が続けられている。。この腱切り術は子どもたちの持っている大事な体を支える機能を壊している困った手術ととらえられます。あらゆる機能はこの二つのの手術がなされると全く駄目になる。子どもたちがもっている怖い話です。この昔からの手術を単に非難するつもりはありません。しかし、この古い治療の怖さは一般に認識されないと、脳性麻痺患者さんにとっては悲劇になるのがつらいことを私たち整形外科医はもっと真剣に認識したいものです。。

 早く昔からの、内転筋腱切り術、アキレス腱腱切り術、母指内転筋腱切り術、大胸筋腱切り術などの機能低下をする手術をやめ、より科学性の高い、麻痺の人達の人間性、尊厳を高める手術を展開する事が求められるのではないでしょうか。

 世界的にはクロス肢位歩行の治療では内転筋腱切り術と大腿骨回旋骨切り術の組み合わせが盛んにおこなわれています。この手術の組み合わせはどの整形外科医も簡便に出来るという良さがあり、広く行われているようです。でも私は内転筋腱切り術は股関節で体幹をしっかりまっすぐ保持する長内転筋の力をなくす最悪の手術ととらえています。

 内ねじれはこの手術では治ってもクロスは本当にやわらかくなおるのかと疑問に思っています。でも次善の治療として外国でほかの治療よりはよいととらえられるのでしょうね。しかし、内転筋を切る手術を組み合わせる限り、決して安定性のゆたかなクロス股関節内ねじれは決して親が満足する内容にはならず、外国の整形外科医の自己満足に終わるのではないでしょうか。本邦の整形外科医がクロス治療にどの治療法を選ばれるかとすれば、私達の提唱する長・短内転筋を温存した選択痙性コントロール手術がお勧めです。丁寧に一歩一歩一つずつステップを治していけば、美しいスタイルにたどり着く事間違いなしです。

 皆さんがクロス内ねじれ股の選択的痙性コントロール手術を習熟し、皆さんの所で世界の整形外科医が勉強に来れるよう準備されてはいかがでしょうか ?日本の整形外科医がこの混乱の効果のない内転筋腱切り術に終止符を打ち、効果の美しい脳性麻痺クロス治療を脳性麻痺の方々にプレゼントする。世界のリーダーになってください。