クロス治療と整形外科選択的痙性コントロール手術

クロス肢の治療は非常にむずかしい

クロスで立ち歩きの出来ないお子さんがたくさんいます

 

 お母さん、お父さん、クロス股内転もったお子さんがいます。立とうとしてもクロスのためになかなか足で体を支えることの出来ないお子さんがいます(重いお子さんですね)。どうされますか?

 

早期リハビリ

 まず、リハビリでなおせないかと考えますね。しかし、1~2年もリハビリをやってみますと、どんなにはげしいリハビリをやっても、このクロスというかたい足の交叉、内転は簡単にはなおらない事が分かりますね。そんなになまやさしいものではありません。クロス変形は、、。

 クロス変形は脳性麻痺の治療の中でもっとも治すのが難しい変形・緊張なのです。体の外側から訓練したぐらいでは決してまっすぐに美しく力強くはなりません。

 

筋弛緩薬治療 

 近年では筋弛緩薬を注射した上でのリハビリが効果あると勧められているようです。でも一生この筋弛緩薬を使うわけにはいきません。薬の効果が切れたら、一瞬にして緊張は再発し、その緊張のためにリハビリの効果は消失し、あとに頑固なクロスが残ります。クロスが消えてなくなる事はないですね。(今、私はクロスが本当に消えてなくなり、立ちやすく、つかまり立ちなどが出来るようになるかどうかの話をしています。)将来学童期、思春期、成人までの効果、クロスの消失は期待出来ないのです。

 

脳神経外科の後根切除術

 脳神経外科でも下肢のかたさをとるための後根切除術という手術が用意されています。しかし、もともとが力強く歩く事が出来ない足に対して、かたさをやわらかくするという目的の手術であり、歩けないお子さんにこの手術をすると両足の力がさらに弱くなって、体を支える力をさらに少なくする事になるようです。

 ですからこの手術は歩けないお子さんのクロスをなおす治療には使えないと推測されます。クロス変形の治療はむずかしいものですね。簡単になおす事は出来ないのです。

 

古典的整形外科(内転筋切腱術・腸腰筋切腱術)

 このような手詰まりの中で、2~3才になりますと、このクロスは整形外科手術でなおせないかという考え方が生まれてきます。

 しかし、この古典的な整形外科手術に対しては他の部門から批判的な意見が出ているのです。手術のあと、かえって力が落ちて下肢がぐらぐらになるという批判です。頑固な頭をもった整形外科医はクロスをおこす緊張した筋を切ったらよくなる筈と信じ、古典的な内転筋切腱術を含む手術をしています。結果は絶望的なのです。この古典的な整形外科手術はやってはならない悪い手術なのです。

 こうして歩けないお子さんのクロス股変形の治療法には有力のものはないという悲惨な状態にあります。方法はありませんでした。

 ただ単に物理的に股関節脱臼を予防するための内転筋切腱術・腸腰筋切腱術のみがなされ、美しい力強い体を目指す治療は存在していなかったと自分自身への反省を合わせて断言出来る整形外科のさびしい治療でありました。

 

さて、ではなぜ全世界的に期待されている整形外科手術が期待を裏ぎっているのか?

 なぜ整形外科が脳性麻痺のクロスをなおせないか?

 不思議に見えますが、一見滑稽な風景でもありますね。全世界の科学者が医学者そして整形外科医が力を込めて治そうとする脳性麻痺のクロス変形でやればやるほど独特の脳性麻痺クロス姿勢は決してとれる事はありません。

 股(また)のうちねじれは大腿骨の回旋骨切り術で治るけど立たせたときの内転クロスだけは決してなおす事は出来ないのです。私の56年間の観察です。クロスがなおった治療は見た事がありません。不可能であったのです。その理由は古典的な世界中の整形外科医がおこなっている長内転筋切腱術が悪い手術だからです。

少しずつ話していきましょう

 整形外科で脳性麻痺を専攻する医師は100%と言っていいほど、クロスを治すのに長内転筋を切り離す手術を考えるでしょう。むしろこれを切りたがります。クロス治療での長内転筋切腱術信仰といっていいでしょう。根拠のはっきりしない絶対的信仰です。日本に限らず世界の整形外科医はクロスの治療は内転筋切腱以外にないという考え方に酔いしれています。一見内転筋を切ればクロスは開くと感じています。こんな古典的な整形外科にあなたの大事なお子さんのクロス治療を任せても、いつまでも弱々しいクロス姿勢からは逃れる事が出来ないのです。

 さあ、発想を180度変えるのです。選択的痙性コントロール手術の理論に基づいた私達の考えではこの長内転筋を切り離す手術は最悪の手術というものです。

内転筋切腱術ではクロスは良くならない

 現在、日本の一部での選択的痙性コントロール手術を信じる医師を別にしてほとんどの日本そして世界の脳性麻痺に取り組む整形外科医はクロス股に対しては長内転筋切腱術が最善の効果ある手術であると固く信じ込んでいます。しかし私の過去の治療経験の中でクロス変形を長内転筋切腱術で治療して、スタイルが良くなったり、立ち上がる機能が上がったりした人は1人もおりません、満足例も1例もありません。長内転筋と短内転筋を同時に切る手術をおこなった患者さんも、あの辛いかっこ良くない脳性麻痺スタイルが消えたり、歩けない人が歩けるようになった人は1人もおりませんでした。かたく頑固になったクロスを伴う貧弱な脳性麻痺立位の状態が変わる事なく続いています。決して立つ能力が高まった人はいませんでした。古典的手術後の機能を見てもよくなった人もいなかったのです。むしろ長内転筋切腱は股関節の内旋変形を更に頑固なものにして、さらにバランスを悪くしているととらえられます。

 私がなぜ内転筋切腱術を悪の手術というのか、最低の手術と極評するのでしょうか。それは股関節や膝関節、足の部分でどんなにいい手術をしてもこの内転筋手術を行いますと、ほかの場所で手術を行われた効果が一瞬にしてなくなり、あとに貧弱そして頑固な脳性麻痺スタイル、股内ねじれ、膝つっぱりのスタイルが現れ、一生続くことになります。この最悪の状態を食い止めたいからなのです。

内転筋を切ってクロスをなおすという整形外科は見合わせたほうがいいとおすすめしたいぐらいです

 内転筋を切られて機能が落ちるともう助けようがありません。頑固な内旋、かたい膝のつっぱりが一生続く事になるのです。やわらかいふっくらとした長内転筋をきりますと、あとに残る固いかたい他の内転筋が働いて、下肢を内転させるのです。

 私のところの選択的痙性コントロール手術ではどんな重いクロスでも長内転筋は切りません。内転筋のようなふっくらとした短い筋は切らないです。その代わりにその他のかたい内転作用のある筋を切って緩め、クロスを少なくして正常の股の開きに変えていきます。美しくやわらかく力強く開きますよ。歩き始める人もたくさんいます。そう、長内転筋は体を支える大事な筋なのです。いったん切り離されると機能は元に戻らず一生機能の悪い状態は続きます。ほかのかたい筋が代償的に働き始め、働きがさらにかたく弱々しくなるのです。これは避けなくてはなりません。世界の整形外科医にこの事を勉強してもらいたい。

 お父さん、お母さん、お子さんの機能をあげスタイルをよくしたいと考えるのであれば、まずクロスの治療で長内転筋を絶対に切り離さない整形外科医の所に行く事です。「少しぐらい切っても大丈夫」といわれる先生の所に行っては、あとでさびしく辛い思いをします。長内転筋は全く切らなくてもクロスはなおせるという絶対の信念を持った整形外科医の所に行かれる事をお勧めします。