ジストニアの治療に整形外科が必要か?

 

(ジストニアの治療革命)

 

 ジストニア、ジスキネジアといった動きや姿勢の異常をきたす病気は想像以上に辛い、怖い、恐怖の病気ですね。気鋭の若者の頚をねじり倒し、指を巻き込み、体のねじれ、手首のねじれ、足のねじれで絶望の暗闇の中に突き落としたしまう。一生のあいだ、体のどこかの筋が突っ張り、痛みがつづき、治る事のない残酷な病気ですね。

 ある時は一つの職業の遂行を困難にし、ある時はプロフェッショナルなミュージックのテクニックをマイナスにしてしまう。怖い病気ですね、人の人生を台なしにしてしまう。私が知っている数少ないジストニアの人でも、ギターが弾けなくなった、歯科衛生士の仕事が出来なくなった、といった例が存在しています。美容師も仕事ができなくなる。美しく痛みなく治していかなくてはなりません

 整形外科の運動学的分析によりますと、動きの異常はある特定の筋あるいは特定の筋群の異常な緊張で起こってくるようです。具体的には長く、太く、早く動く多関節筋のこむら返しの動きの緊張で起こってくる。しかもその多くは単発で局所性の事が多い。

 しかし、体のあちこちで局所的に起こるジストニアのこむら返しは、それぞれに原因があります。そのまましていては、もとの正常なやわらかさにはなりません。激しい痛みと、こむら返しの緊張は残ったままになる。一生の辛い痛みの筋緊張で苦しむ事になります。

①親指の急激な曲がり 、、、、、、、、   長母指屈筋の緊張

②手指のうち特に薬指と中指の巻き込み 、、、深指屈筋,浅指屈筋の緊張

③頚の一側への曲がり(頚部ジストニア)、、、胸鎖乳突筋、頭、頚最長筋の緊張

④頚の反り(頚のジストニア )、、、、、、、、頭最長筋の緊張

⑤口の噛みこみ (口のジストニア )、、、、、側頭筋の緊張

⑥瞼の閉じ ,、、、、、、、、、、、、、、、、、、目輪筋の緊張

⑦股関節のクロス 、、、、、、、、、、、、、、、腸腰筋の緊張、半膜様筋の緊張

⑧足の内反尖足変形、、、、、、、、、、、、、腓腹筋,後脛骨筋の緊張

⑨背中の反り、、、、、、、、、、、、、、、、胸最長筋、腸肋筋の緊張

⑩お腹の曲がり 、、、、、、、、、、、、、、、腹直筋、外腹斜筋の緊張

ととらえるのです。局所の特定の筋あるいは筋群のこむら返しの動きが大半のようですね。(勿論、遺伝性あるいは先天性のジストニアなどのの全身性のジストニアはこれら局所、局所の筋の組み合わせととらえられます。)

 今日はこのうち頻度の高い局所性ジストニアの話からさせていただきます。

 ところで皆さん、ふくらはぎのこむら返しを経験されたことがありますか?ある激しい運動を繰り返した後などに足を踏みつけるとふくらはぎの筋が突然つっぱって足を足裏の方へきゅっと曲げてしまう。「あ、いたた」ととんでもないきゅっとあげられた痛みですよね。ふつうの人では軽く足首を伸ばして待っておくとこむら返りは良くなり、普通のやわらかい足に帰ってしまいます。しかしからだのあちこちに起こってくるジストニア(こむら返り)にはそれぞれに原因があり、そのままにしては元の正常のやわらかさに戻らない。痛みとこむら返しの荒々しいつっぱり(緊張)は残ったままになる。一生辛い辛い痛みと異常な動きに苦しむことになります。

 という事で、

 さあ、このこむら返しを整形外科手術で局所、局所でゆるめ、正常の筋のやわらかさを取り戻すのです。では整形外科ではどうやってこれらの筋の正常化を図るのでしょうか?

 まず、頚部のジストニアの整形外科治療から考えてみましょう。動画8の術前、術後の図をみてください。

 頚が右に倒れているジストニア頚性斜頸ですね。体幹もジストニアで右に倒れています。頚を含めて体とともに体全体で90度近く曲がっており間違いなくジストニアです。「脳の手術は怖い。やりたくない。」と語られます。「何とか頭だけを整形外科でまっすぐ治してしてください、」と語られます。年齢は70歳。10年前ほどにうつ病にかかって、OOといううつ病の薬を二年間ほど飲んだ。と語られます。その時は何となくウキウキ感があったとかたられます。現在もすこし抗精神病薬を飲まれています。やはり、薬剤性のジスキネジアなのでしょうか。

 頚と体幹が右に倒れている典型的なジストニア頚性斜頸です。それにしても頭が重く、辛いでしょうね。頸椎(頚の骨)の骨も、術前X線で見ますと、骨も多少変形しています。早く治したいですね。

 そこで,このジストニア頚性斜頸はどのように脳神経外科学でどのように治すのか、調べてみました。深部磁場刺激療法で脳の中に金属を埋め込んで、電気刺激を与えて治そうとしているのですね。ただ、このジストニア頚性斜頸がどの程度、なおるのか、なおった写真が、どこの本にも、どこのホームページにも美しく示されていない、ようなのです。不思議な話ですね。ほとんどの公表されている改善例は、東洋医学でよくなったという、写真で拝見するとよくなったかどうかよくわからない程度の治り方にすぎません。ジストニアの局所性の頚部斜頸がすっきりと治った動画がないように思われます。

 頚部ジストニアを整形外科ジストニアコントロール手術で治してみます。動画8を見てください。モーションコントロールの実際を見てみましょう。

 車椅子にのっておられる70歳の御婦人です。年齢は70才です。ジストニアで頚と体幹が右に深く曲がっています。どのような整形外科手術をしたのでしょうか?

①第一回のジストニア整形外科手術:整形外科ジストニアモーションコントロール手術

 a)右胸鎖乳突筋中枢腱全切離術

 b)右僧帽筋上行枝(後頭部)切離術、

 c)右頭最長筋の切離術

  を行ないました。

 胸鎖乳突筋は多関節筋で丈夫な筋,しかもばねが強く、切った場所で筋肉が再生しやすい頑強な筋線維からなり立ってるのです。中途半端に切ると、すぐに切った場所がくっついて再発します。という事で、まず中枢端を丁寧に切り離しています。ジストニア筋の緊張そのもの切り離します。

 僧帽筋は肩から右後頭部に向かう筋を右方向に引き倒す筋として切り離しました。これも多関節筋の一部で緊張が強いと判断しました。

 頭最長筋も粘りの強い頑強な筋で頭を末梢方向しかも伸展方向にに引き倒す多関節筋筋として、筋の中央部で切離しました。

 手術後、この御婦人の頚の倒れは一気に少なくなり、頭は 20~30度ほど持ち上がりました。頭がとても軽くなったと喜ばれました。すごく楽になったといわれます。

 やはり胸鎖乳突筋の強い緊張、拘縮がこの頚部ジストニア緊張の最大の元凶のひとつの筋になっているのですね。胸鎖乳突筋の中枢の腱を全部切り離す整形外科手術は、頸の傾きを治すのに極めて効果的なのですね。勿論、僧帽筋も、主要な横倒し筋と捉えられますし、頭最長筋も多関節筋としてジストニア緊張をもたらす筋として

 しかし、残念な事に、第一回の整形外科手術だけでは緊張のコントロールは十分ではなったのですね。たしかにこの程度の切り離しではジストニアの頚の傾きをとるには不充分なのですね。確かにかなり良くなるのはかなりよくなるのですけど、この頚の傾きは、一回ぐらいの腱を切るぐらいの手術で治るようなやわな緊張ではないのですね。単に胸鎖乳突筋の中枢腱を切るぐらいでは決して治る事にない、頑強なジストニア筋そのものの、ばねの強い、再生能力の強い筋ととらえました。また、もう一つの多関節筋の頭最長筋も中枢腱で完全に切ってしまったのに、さらにもう一つの多関節性伸筋の僧帽筋上行枝も切離したのに、すぐに再発してしまったのです。20-30度ほどの傾斜が残っています。

 一方、頸の横倒しとともに体幹も右に捻じれており、全体として頚が右に傾斜しているように見えます。この体幹のねじれを治さないと斜頸は治らないと考えました。

この残された筋のジストニア緊張を切り離しにいきます。残ってる筋緊張があるのですね。ジストニアの緊張をとり去るには徹底したジストニア筋だけの切離が必要なのです。

 3週後、さらにジストニアの緊張筋を求めての二回目の整形外科手術にはいります。

第二回目の整形外科手術、体幹のジストニア緊張筋コントロール手術

a)腸肋筋切筋術

 腸肋筋という背中の下半分をそらし、横に曲げる筋もあります。体幹の下半分を横に曲げて倒す頑強なジストニア多関節筋になります。体が右に反ってますので、これも緩める必要があります。これを完全に切り離す整形外科手術をしました。切腱の高さは腰の高さになります。

b) 胸最長筋腱延長術

 もう一つは頭最長筋という右側に体を反らせ、荒々しく働くジストニア筋を整形外科的に切り離しにいきます。これも緊張が特別に強い、丈夫な多関節筋です。体の後側に皮切を入れて、このジストニア筋を切り離し、力が働かないようにジストニア筋そのものを完全に切り離す整形外科手術です。このジストニア筋はつぎの筋は整形外科手術で腰の高さで切離しますので、ここでは腱様部分だけ切離します。

 この二つの荒々しく働く多関節筋はジストニア斜頸の中に隠された、もう一つの悪のジストニア緊張筋になります。切ってしまっていい筋なのです。一方、体幹を支える重要な重要な抗重力筋は腰方形筋など、完全に温存しなくてはなりません。

 こうして、横に垂れていた頭と体幹ががすこしづつまっすぐなってきます。。手術が終わると御本人は「楽になったと語られます。痛みが減ったと言われます。また全体として特に体幹のねじれがよくなったと語られます。効果があったと語られます。でも、まだまだ、20~30度曲がっています。。本人は「まだまだ治したい」いわれます。もっと治してほしいと語られます。

 体幹のジストニアがきれいになおる整形外科ジストニアコントロール手術も少しづつ準備されてきましたね。次にさらなる第3回目のジストニアコントロール手術を紹介します。

第三回目手術 右頚部ジストニア斜頸手術、右体幹ジストニア側弯手術手術です。

a) 広背筋腱延長術
  

 広背筋という固い頑強な痙性ジストニア筋があります。体幹と肩の肩甲骨の間にあり、体幹上部と体幹下部の間に働く頑強な多関節筋ですね。体幹下部の方に体幹上部を引き倒す多関節ジストニア筋です。上腕を肩で背中の方に引く筋でもあります。これを切離しますと で背中の曲がりの上部の部分の曲がりが少なくなり、背中が少し伸びて 来まます。背中を横に、そして後ろに倒す悪者筋ですね。これを切離して体の胸の部分の背中の右方向への反りのジストニアを除いていきます。もう一つの体幹上部の体を右方向、そして後方向へ倒す筋への整形外科選択的ジストニアコントロール手術になります。

b)胸鎖乳突筋末梢胸骨枝、鎖骨枝の切離

 なかなか頚はきれいに治らないものですね。最初から数えて、一カ月半、二回頚部と体幹の手術をしたのに、もう、胸鎖乳突筋が再度緊張してきました。頑強なジストニア緊張筋です。もう一度、今度は末梢腱を徹底的に切離します。整形外科によるコントロール手術にはの手術には辛抱が要りますけど、確実に切れば切るほど良くなるという喜びがあります。

これでどうだ、モグラたたきはこれで終わりになるかと思いました。結果はどうでしょうか。相当よくなりました。やるたびに改善していきます。

でもまだ緊張筋は残ってるいのですね。何が残っているか検討してみられませんか? 案の定まだ不十分なのです。これでもまだ完璧には治らないといわれます。御本人はまだ不十分、もう少し楽にしてくださいと言われます。そこで、お腹の前の緊張筋を緩めることにしました。

第4回目手術、腹部ジストニア筋解離術、残存胸最長筋腰部筋の全切離術

 これまでこのジストニア側弯に対しては、腰の腸肋筋など背中の筋の緊張を除く整形外科手術をしてきました。反りが強いとみてきたのです。でも、お腹の屈筋も緊張してるのですね。これをゆるめる整形外科も必要と判断しました。そこで、外腹斜筋の外側を横切しました。同時に、胸最長筋の腰部筋を全切離しました。

 これで頚と、体幹との痙性ジストニア筋はすべて切り離し、一方で体をまっすぐに支える抗重力筋はすべて温存する頚部体幹ジストニアコントロール手術の完成となりました。

 動画8の術後を見ていただけると幸いです。まだ少し曲がりが残っていて、不十分ですが、頚も体幹も柔らかく、ふっくらと伸びています。まだ、大胸筋、大円筋、小円筋のジストニア緊張が残っていますが、頸と体の大まかなジストニア緊張筋はもう働かなくなっています。後に残された抗重力筋が頚をそして体幹を支えてくれることと思います。ひょっとすると股関節にも緊張があるのかもしれません。

 ともあれ、この頑強なジストニアは適切な整形外科ジストニアコントロール手術で大きく消退していきます。頚部ジストニアに苦しむ方々、このくびの傾きを治すのはなかなか簡単にはいきません。でも整形外科の手術手技を使って、局所局所のジストニアを切り離し、からだの変形を少なくし、ジストニアの動きそのものをなくしていく整形外科の治療もジストニアの治療には極めて有効で、あのくるしい痛みから逃れ出る事が可能です。是非あなた方の味方になれる手術と思います

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