アテトーゼ(二次性ジストニア)治療の経験から

 アテトーゼは間違いなく真正真のジストニアです。原因は酸素欠乏あるいは血液型不適合で脳の椎体回路といわれる部分が変性し、そこが原因で手足、体幹に不随意な動きが出てくると規定されています。一見、整形外科ではとても治せないと感じる体の部分が揺れるようなうごきで緊張異常(distonia)を起こしております。脳性麻痺の場合はこの異常緊張をアテトーゼと名づけられているのですね。

 私が脳性麻痺に取り組み始めた頃には整形外科では、この神経系の異常で起こるジストニアは治るような気がしない奇妙な動きをする病気と捉えられていました。指のジストニア(アテトーゼ)、頚のアテトーゼなどとても治りそうもないという感じでした。僅かに脳神経外科で定位脳手術として脳の一部を焼灼して異常な動きをとめるという治療が行われ、他の科の担当する分野の病気と私は考えておりました。

 しかし脳神経外科の手術もそれなりに困難もあったのでしょう。焼灼手術も万全なものではなかったと聞いておりました。難しい病気でした。

 整形外科の分野でも何とか外科的にこのジストニア緊張を取れないか腱延長を使った取り組みがなされて、より一定の効果は見られていました。内反足変形の矯正などには効果があったのです。しかし、手指、頚、体幹と体のあらゆる部分では筋、腱をゆるめると同時に力も弱まるという困難があり、その取り組みに大きな困難がありました。

 もう脳神経外科の仕事と私自身が決めつけている感じであったような気がします。

 しかし、脳性麻痺の筋の動きの異常を分析する中で痙性をもたらす硬い筋と痙性の少ないやわらかい体を支える筋と、人の骨格筋は大きく二つに分けられている事を知り痙縮の抑制手術が可能になりました。この瞬間、私達整形外科医はアテトーゼの動きをする筋も同様に分離してとらえる事も出来る事を知ったのです。

 痙縮筋もジストニア筋も同じく荒々しく不自由に動き、体を体の内筋から引き倒す野生の筋である事を知ったのです。この野生の筋が荒々しく動き、痙性やジストニアを作っていたのですね。これをゆるめて荒々しい硬く不随意に動く野生の動きをとめてやれば痙性もジストニアも少なくなる事を知ったのです。

 一方で人の体の中には長い年月をかけて人の体の形と動きを生み出してきたやわらかいふっくらとした短く太めの体を支える力強い筋が多く発達していたのですね。この本来の人の形と動きをもたらす人の特有の完全に残し、この動きを活性化しますと、限りなく美しい人本来の動きと形が蘇る事を知り、脳性麻痺を治療していったのです。

 そこでどんな頑固なアテトーゼでもこの整形外科選択的痙性コントロール手術でゆるまり、代わりにやわらかく自分の思うように動く体が甦ってくるのに気がいたのです。こうしてアテトーゼは頭の先から手指の先まで体幹から足にかけて、すべて硬い筋を切り荒々しい動きがとりさられ、正常の動きが甦ったのです。あの難しかったアテトーゼの揺れる頚、ねじり曲がった身体幹、握りしめられた手指、下肢の変形はすべて整形外科の手術ですべて正常化の道を辿ったのです。

 脳性麻痺アテトーゼは脳神経外科でしか治らないと皆が考えていたのに、この考えは覆り、アテトーゼは脳神経外科だけでなく、整形外科の中で運動医学的な手技を用いて完璧に治るようになったのです。特にアテトーゼ頚の治療に至っては、痙性コントロール手術で頚の揺れを少なくした上で同時に壊れかけた脊髄を圧迫していた頚の骨を修復する骨性の前方除圧固定術と合わせ、死の病気と恐れられた麻痺性頚髄症を完璧に正常化するという画期的な役割をしてきたのです。もう現在では脳性麻痺の神経根症、脊髄症は怖い病気ではなくなっているのです。

 現在の時点で痙性コントロール手術で10年余り頚部前方除圧固定術で更に20年余り、アテトーゼは麻痺の方の寿命を伸ばす事を可能にしました。頚部選択的痙性コントロール手術の定着はアテトーゼ麻痺(ジストニア)を持った方々への大きな福音となっています。

 こうして二次性ジストニアは運動学的治療によって美しく完全に治せる時代になったのです。動画例5(図1術前、図2術後)をご覧ください。頚のねじれがきれいになくなっているのです。